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「定款の目的」が原因で古物商許可が取れないことがある?
「古物商許可を取ろうと思って、必要書類をそろえたのに、警察署で“定款の目的が足りません”と言われた。」
そんな相談が最近とても増えています。
特に法人で中古品の販売を始めようとしている方——たとえば中古家電のネット販売や、メルカリショップを法人名義で運営したい方——に多いケースです。
古物商許可の申請では、警察署が「その会社が古物営業を行う目的を持っているか」を定款の内容で確認します。
この“定款の目的”とは、会社の登記簿謄本にも記載されている「事業の範囲」を示す項目です。
つまり、ここに古物営業に関する文言が入っていなければ、いくら事務所や役員が要件を満たしていても、申請自体が受け付けられないことがあります。
実際、市川警察署や船橋警察署、松戸警察署などでも、最近はこの「目的欄チェック」が以前よりも厳格になっています。
「物品販売」と書いてあるだけでは不十分で、「古物の売買」「中古品の買取販売」「リユース事業」など、より具体的な表現が求められる傾向にあります。
警察署の担当者から「このままでは古物営業を行うとは読めませんね」と指摘され、修正・登記変更を求められるパターンも少なくありません。
こうしたトラブルの多くは、「申請より先に定款を確認していなかった」ことが原因です。
法人登記の時点で「古物」や「リユース」「中古品販売」などの文言を入れておけばスムーズに許可が取れるのですが、副業感覚でスタートしたり、別事業から派生的に中古品を扱うようになった場合は、目的欄が古物営業に対応していないことが多いのです。
せっかく販売準備や仕入れルートを整えても、申請でストップしてしまえばもったいない。
「定款の目的を整える」は、古物商許可をスムーズに取るための最初の一歩と言えるでしょう。
次章では、なぜそこまで“目的”が重視されるのか——その理由をもう少し掘り下げてみます。
なぜ「定款の目的」が重視されるのか
古物商許可の申請で「定款の目的」が問題になるのは、単なる形式的な理由ではありません。
それは、定款が「会社がどんな活動をしてよいか」を決める“基本ルール”だからです。
警察署が許可を出すとき、「この会社は本当に古物営業を事業として行う意思があるのか?」を確認する根拠になるのが、この目的欄なのです。
たとえば、定款に「インターネット販売業」とだけ書いてある場合。
これは、新品の仕入れ販売を想定していると解釈されることが多く、「中古品を仕入れて販売する」とまでは読み取れません。
つまり、古物営業に当たる取引を行うには、“中古品の売買”という要素が明記されている必要があるのです。
特に、警察署の生活安全課では、最近「古物営業法違反の防止」を重視する動きが強まっています。
リユース市場の拡大に伴い、盗品の流通を防ぐためにも、会社の事業目的が法に沿っているかをより厳しくチェックする傾向があります。
「古物商許可の審査」と聞くと堅苦しく感じますが、要は「中古品を扱う会社として信頼できるか」を見られているのです。
また、定款に書く文言は、単に“許可を取るため”だけでなく、取引先や金融機関からの信頼にも影響します。
「古物営業法に基づく古物の売買およびその仲介」など、明確な表現があれば、取引の範囲や業務内容を第三者に示すことができます。
環境意識が高まる今、リユースやリサイクルといった言葉を加えておくことで、サステナブルなビジネス姿勢を伝える効果もあります。
市川・船橋・松戸といった地域でも、行政や商工会議所が「循環型ビジネス」を支援する動きが進んでおり、古物商許可を得て中古品の再流通を担う企業は、地域経済の一翼を担う存在として注目されています。
その意味でも、「定款の目的」は単なる文書上の項目ではなく、企業としての方向性や社会的責任を示す大切な要素なのです。
次章では、実際にどんな場合に「定款の修正」が必要になるのか、具体的なパターンを見ていきましょう。
修正が必要になる具体的なパターン
「うちはすでに“物販業”って書いてあるし、大丈夫だろう」と思っている方も多いのですが、実際にはそう単純ではありません。
古物商許可の申請において、“古物営業”の意図が読み取れない表現は、申請の受理すらされないことがあります。
ここでは、よく見られる3つのパターンを紹介します。
①「古物営業」に関する語がまったくないケース
最も多いのが、「物品販売業」「インターネット通信販売業」など、一般的な販売業の記載のみで、“中古品”や“再利用”といった言葉が入っていないパターンです。
警察署の担当者からは「新品の販売を想定しているように見えるため、古物営業とは判断できません」と指摘されることがあります。
この場合、「古物の売買」「中古品の買取・販売」「リユース品の仲介」など、具体的な業務を目的に加える必要があります。
②「販売」だけで「仕入れ」や「買取」が抜けているケース
意外と多いのが、「中古品販売業」と書かれているのに、「買取」や「仕入れ」に関する文言がないケース。
古物営業法では、“売る”だけでなく“買う(仕入れる)”行為も古物営業に含まれます。
中古車や中古家電のように、仕入れと販売が一体となるビジネスでは、「中古品の買取・販売」あるいは「古物の売買」とセットで記載しておくのが確実です。
③「リサイクル」「リユース」など曖昧な語だけの場合
最近は、環境配慮やサステナブル志向から「リユース事業」「リサイクル業」とだけ書かれている定款も見られます。
しかし、これらの言葉は広義であり、必ずしも古物営業を意味しません。
たとえば、廃棄物処理業や資源再生業を想定した文脈とも解釈できるため、警察署によっては「古物営業とは別事業」と判断されることがあります。
「古物営業法に基づく古物の売買及び仲介業務」といった具体的表現を加えると、誤解を防げます。
「古物営業法に基づく古物の売買および仲介業務」などの表現は確実性が高いものの、各署の実務担当者と事前確認を行うのが最も確実です。
最終的な判断は各警察署(生活安全課)の審査基準により異なるため、同じ文言でも対応が分かれる場合があります。
目的欄の修正が求められないケース(例:既に「中古車販売」など具体的業種が明示されている場合)も存在します。
修正には株主総会の決議や登記変更の手続きが必要なため、思ったより時間がかかります。
もし申請直前に発覚した場合、許可が1〜2か月遅れてしまうことも珍しくありません。
そのため、申請前に定款を確認し、必要であれば早めに修正スケジュールを立てることが大切です。
次章では、実際にどうやって定款を変更すればいいのか、スムーズに進めるための具体的な手順を解説します。
定款変更の手続きとスムーズに進めるコツ
「定款の目的を修正しないと許可が取れない」と分かっても、どう進めればよいか戸惑う方は多いでしょう。
定款の変更は、単に文言を直せば済むものではなく、会社としての正式な手続きが必要になります。
以下の流れを押さえておくと、スムーズに進められます。
① まずは「目的文言案」を作る
最初にやるべきことは、どんな文言を定款に追加するかを決めることです。
警察署に提出する「古物商許可申請書」と内容が一致している必要があるため、「中古品販売業」など曖昧な表現ではなく、「古物営業法に基づく古物の売買およびその仲介業務」などの具体的な文言を準備します。
各警察署によって判断や求められる表現が異なるため、申請前に生活安全課へ目的文言を事前確認するのが確実です。
迷う場合は、申請先となる警察署の生活安全課に事前確認を取っておくと安心です。
市川警察署や船橋警察署では、あらかじめ文言案を見せると「これなら大丈夫です」とその場で確認してくれることもあります。
② 株主総会で定款変更を決議する
文言が決まったら、次は株主総会を開いて定款変更を正式に決議します。
小規模法人では代表者ひとりのケースも多いですが、その場合でも「株主総会議事録」を作成しておくことが必要です。
決議後は、新しい定款を作り直し、法務局に「定款変更登記」を申請します。
登記が完了すれば、ようやく“修正後の定款”が有効になります。
③ 古物商許可の申請書と整合させる
登記が終わったら、今度は警察署への古物商許可申請です。
この際、「会社の登記事項証明書」と「定款の写し」を添付しますが、どちらにも“古物営業”に関する文言が明記されていなければなりません。
もし登記がまだ反映されていない段階で申請すると、「登記変更後に再提出」と言われてしまうので注意が必要です。
なお、最近は電子定款やオンライン登記申請が一般化しており、手続きを短縮することも可能です。
行政書士や司法書士に依頼すれば、文言の確認から申請書類の作成まで一括でサポートしてもらえる場合もあります。
とくに市川・船橋・松戸などでは、管轄警察署ごとに審査の基準や表現の好みが微妙に違うため、専門家をうまく活用すると安心です。
次章では、定款の目的を整えることが“単なる形式”ではなく、“事業の信頼性を高める行為”でもあることをお伝えします。
目的欄を整える=事業の信頼を整える
「定款の目的の修正」──こう聞くと、どうしても“お役所的な書類対応”のように感じるかもしれません。
しかし実際は、事業を長く続けていくうえでの信頼の基礎づくりでもあります。
古物商許可の申請において目的欄を整えることは、会社として「何をどう社会に提供していくか」を明確にする機会なのです。
たとえば、「中古家電の再販」や「中古車の買取・販売」を行う事業者であれば、明確に「古物営業法に基づく古物の売買及び仲介業務」と定款に記すことで、取引先にも「うちは合法的なリユース事業を行っている会社です」と胸を張って示すことができます。
特に、近年はメルカリやヤフオクなどを通じたECビジネスの拡大により、“中古品を扱う=グレーゾーン”というイメージを払拭する姿勢が大切になっています。
また、世界的な円安や資源高の影響もあり、新品よりも中古品・リユース品を選ぶ流れはますます強まっています。
リユース事業は、環境負荷を減らしながら利益を生み出せる“サステナブルビジネス”としても注目されており、市川・船橋・松戸といった地域でも、中古品販売を軸にした小規模事業者が増えています。
こうした動きを支えるには、法的にきちんとした基盤が欠かせません。
その第一歩が、定款の目的を整えることです。
「許可を取るために修正する」のではなく、「これからの事業の信頼性を築くために整える」と考えれば、その意味が一段と明確になります。
形式を整えることは、事業への覚悟を形にする行為でもあるのです。
もし「文言の決め方が分からない」「どこまで直すべきか不安」という場合は、行政書士など専門家に一度相談してみるのも良いでしょう。
たった一行の修正が、あなたのビジネスを大きく前進させるきっかけになるかもしれません。