目次
「え、許可が取り消しに?」から始まる古物商の落とし穴
意外と知らない「古物商許可」のリスクとは
「最近メルカリで副業を始めたんです。最初は家にある不要品を売ってただけなんですけど、意外と売れるから、リサイクルショップで仕入れて本格的にやってみようかと…」
そんなご相談が市川市の個人事業主の方からありました。いま、メルカリやラクマなどのフリマアプリを通じて中古品を販売する動きが活発になっています。副業解禁の流れや円安による中古商品の需要増も相まって、「リユースビジネス」が注目されているのは確かです。
でも、ここでよくある誤解があります。それが——
「中古品を売るって、別に許可なんか要らないでしょ?」
という思い込み。
実は、“仕入れて売る”中古品ビジネスには「古物商許可」が必要です。これは警察署を通じて都道府県の公安委員会が出す許可で、正式名称は「古物営業許可」。対象となるのは中古家電や中古車、ブランド品など13種類の「古物」。メルカリやヤフオクでの転売も、仕入れて繰り返し販売する場合は明確に“古物商”と見なされます。
さらに注意したいのが、“許可を取って終わり”ではないということ。例えば──
・略歴書にウソを書いてしまった
・販売場所(営業所)の実態がない
・申請者本人が「名義貸し」をしていた
こうしたケースでは、せっかく取得した古物商許可が後から「無効」と判断されることもあります。特に「経歴の虚偽」は、実際に過去にも取り消し処分があった重大な違反項目。ある相談事例では、開業準備中に「昔リサイクルショップでバイトしてた」と“経歴あり”と書いたところ、後日確認が入り、実際には“ただの倉庫整理だった”と発覚。結果的に許可が取り消されてしまいました。
本人に悪気がなくても、書類にウソがあれば取り返しがつきません。ましてや中古品の取り扱いは盗品リスクや取引トラブルも想定されるため、行政の監視も厳しいのが現実です。
「え、そんなに厳しいの…?」と驚いた方こそ、これから始める前にしっかりと制度を理解しておく必要があります。
次章では、実際に「経歴に虚偽があり許可が無効になった」ケースを深掘りし、どんな落とし穴があったのかをご紹介します。
「経歴詐称で取り消し」実際にあったケースの全貌
役員の経歴に嘘が…許可が無効になった理由
「古物商許可が取れたときは、正直ホッとしましたよ。でも、まさか“取り消される”なんて思ってもみませんでした。」
これは、松戸市で中古家電のEC販売を始めた40代男性のご相談内容です。
彼はリサイクルショップで働いていた経験を活かし、独立開業のために法人を設立。その際、古物商許可の申請を行いました。法人で申請する場合、代表取締役など“役員”の経歴や人柄が審査対象になります。問題はそこにありました。
申請書類に添付する「略歴書」。この中で、男性は役員の一人に対し、「以前、リユース事業の責任者として勤務していた」と記載。しかし実際は――
・単なるアルバイトだった
・雇用期間が短く、責任者の立場ではなかった
・在職証明や就業実態が曖昧だった
つまり、“誇張”を通り越して「経歴詐称」に該当する内容を記載してしまったわけです。
古物商許可は、一定の信用や適性を前提とした制度です。警察(公安委員会)は、「この人物が責任ある立場で古物取引を管理できるか?」を非常に厳しく見ています。
結果的にどうなったか。
申請後の実地確認(いわゆる“裏取り調査”)で虚偽が判明し、許可は取り消しに。
販売していたECサイトの商品ページには「営業停止中」の文字が並び、大きな機会損失を生んでしまいました。
このように、「形式的には通ったけれど、あとで問題が見つかって取り消される」ケースは珍しくありません。
特に、以下のような状況に注意が必要です。
- 経歴を証明する書類(源泉徴収票、雇用契約書など)が用意できない
- 担当者の“思い込み”で記載してしまっている
- 知人や親族を役員に入れたが、実態が伴っていない
そして厄介なのが、「形式的に許可が下りる」こともあるという点。警察署や公安委員会も膨大な申請を処理しているため、表面上の整合性だけで一旦は通ることも。しかし、開業後の調査やクレーム対応時に書類の整合性がチェックされ、後から一気に信用を失うこともあります。
「少しくらいなら…」という気持ちが、ビジネス全体の信頼を損ないます。とくに中古品を扱うリユースビジネスは、「きちんとした運営をしているかどうか」が命綱。サステナブルや環境意識が高まるいまだからこそ、透明性のある許可取得と運用が求められています。
次章では、こうした背景も踏まえつつ、そもそも「古物商許可」とは何なのか? その基本と、申請の正しい考え方について、初心者にもわかりやすく解説します。
「古物商許可」って何? メルカリ副業でも必要な理由
中古品を“売るだけ”でも許可が必要なワケ
「え、中古品を売るのに許可っているんですか? フリマアプリでちょっと売ってるだけなんですが…」
こうした驚きの声は、市川・船橋・松戸エリアでもよく聞かれます。特に最近は、家の整理をきっかけにメルカリなどで不用品を売る方が増えており、「せっかくだからビジネスとしてやってみよう」と考えるのは自然な流れでしょう。
ですが、ここが重要な分かれ目です。
「古物商許可」が必要になるのは、こんなとき
警察庁の定める「古物営業法」では、中古品などの“古物”を仕入れて販売する事業を行うには、古物商許可が必要とされています。
許可が必要になる典型的なケースは以下の通り。
- リサイクルショップで中古品を買い、メルカリで販売
- フリマで仕入れた中古家電を、知人に再販
- 中古車の買取→再販(個人事業でも対象)
つまり、「一度他人の手に渡った物(=古物)を買って売る」という行為に、“反復・継続”性があれば許可が必要というのが基本的な考え方です。
「古物」ってどこまで含まれる?
実は古物の対象範囲はかなり広く、以下のような13区分が定められています。
- 美術品類(絵画、骨董品など)
- 衣類
- 時計・宝飾品
- 自動車
- 自転車
- カメラ
- 家具・家電製品
- 書籍
- ゲームソフト・音響機器
…などなど
特に、中古家電や中古車などはメルカリでも人気カテゴリですが、どちらも「古物」に該当するため、事業として売買するなら必ず許可が必要です。
「自分で使ってた物ならいいでしょ?」→グレーゾーンに注意!
「いや、自分で使ってたものを売るだけなら大丈夫ですよね?」
この認識自体は間違っていません。古物商許可はあくまで“仕入れて販売”する人が対象であり、家庭内の不要品を処分するだけなら不要です。
しかし──
- 「実際は仕入れてるのに“使ってたことにしてる”」
- 「知人から譲り受けた中古品を何度も出品」
- 「販売回数や売上が副業レベルを超えている」
こういった場合、警察から「無許可営業」と判断される可能性も十分あります。
とくに千葉県内では、古物営業の届出を強化する動きが見られ、市川警察署や船橋警察署でも個人事業主への確認が厳しくなってきています。
古物商許可の取り方は? 個人でも取れる?
安心してください。古物商許可は、個人でも取得できます。
必要な主な書類は以下の通り。
- 申請書
- 身分証明書・住民票
- 略歴書
- 誓約書
- 営業所の所在図や写真
申請は、営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係へ提出します(市川なら市川警察署・行徳警察署、松戸なら松戸警察署・松戸東警察署)。
なお、許可が下りるまでには平均で40日〜60日程度かかります。副業でも「すぐ始めたい!」という方が多いですが、しっかり準備してからスタートするのが成功の近道です。
「面倒そう」と感じた方もいるかもしれません。でも、この手続きがあることで、“誰がどこで古物取引をしているか”が行政側で把握でき、盗品の流通を防ぐ抑止力にもなっています。
次章では、そんな古物商許可の世界で「やってはいけないこと」をピックアップ。気づかないうちに違反になっているNG行為を3つの視点からご紹介します。
知らなかったでは済まされない!古物商でNGな行為とは
古物商許可を取ったあとでやってしまいがちな“3つの落とし穴”
「無事に古物商許可が取れました! これでメルカリ副業も安心ですね!」
…と思いきや、許可を取ってからが本当のスタート。実は、許可を取得した後にトラブルになるケースが少なくありません。特に多いのが、「知らなかった」「そんなつもりじゃなかった」という軽い気持ちで、違反行為に足を踏み入れてしまうパターン。
ここでは、古物商ビジネスで特に注意すべきNG行為ベスト3を紹介します。
① 経歴の虚偽記載(「ちょっと盛ったつもり」が命取り)
申請時に「業界経験あり」「管理経験あり」と記載した経歴。これが後から“確認できない”“ウソだった”とわかると、許可が取り消される可能性があります。
よくあるのが、「昔ちょっとだけ中古品を扱う会社でバイトしてた」→「店長補佐として在籍」と書いてしまうケース。申請書には「略歴書」の添付が義務で、警察署側は必要に応じて勤務先へ照会をかけます。
つまり、“経歴詐称”は警察がちゃんと確認するということです。
意図的でなくても、誤解や勘違いでウソを記載してしまうと、行政処分の対象になる場合があります。「書類に書くことだから…」と軽視しないことが大切です。
② 名義貸し(「友達に使わせてるだけ」が大問題)
たとえば、あなたが市川で取得した古物商許可を、船橋にいる知人に貸してメルカリ販売を手伝わせたとします。
あるいは、あなた自身が許可を持っていないのに、家族や友人の名義で中古品を出品していた場合。
これ、完全にアウトです。
名義貸しは古物営業法違反であり、罰則の対象。5年以下の懲役または100万円以下の罰金という、重いペナルティが課される可能性も。
古物商許可は“営業主体ごと”に必要です。個人で申請したなら、本人が、本人の営業所で、許可された方法で営業するのが前提です。「許可を持ってる人の名義でやれば安全」ではなく、むしろ危険を招く行為だと理解しておきましょう。
③ 管理台帳をつけていない(盗品を売ったことになるかも)
古物商には、商品の「仕入れ先」「特徴」「販売先」などを記録する「帳簿=台帳」の管理義務があります。これは、盗品などの不正品が流通した際に追跡できるようにするための措置。
「中古品は仕入れてきたけど、記録はしてないなあ…」
「いちいちノートに書くの面倒で」
という方、要注意です。
管理台帳をつけていないと、盗品をうっかり仕入れて売ってしまったときに、あなた自身が“加害者側”として扱われるリスクも出てきます。警察の調査が入った場合、商品履歴を確認できなければ、「盗品の流通を助長した」と見なされかねません。
最近は、Excelやクラウド台帳アプリで簡単に記録できるツールも増えています。初心者の方こそ、最初から“仕組み化”することが信頼への第一歩です。
“信頼される古物商”であるために
これらのNG行為は、どれも「ちょっとした気の緩み」から始まるものばかりです。でも古物ビジネスは、“信頼されてこそ成り立つ世界”。中古品を安心して買ってもらうには、「ちゃんとしてるな」と思ってもらえる運営が大切です。
だからこそ、許可を取ったあとが本当のスタート。
「行政に見られている」ではなく、「お客様に信頼されるために」と考えると、自然と行動が変わってきます。
はじめてでも安心!古物商許可を取る3つのステップ
副業でもここまでできる。あなたの中古ビジネス、今日から“正式スタート”へ
ここまでお読みいただき、「自分にも関係あるかもしれない」と思われた方も多いのではないでしょうか。
実際、メルカリやラクマで副業を始める人の多くが“無許可リスク”に気づいていないのが現状です。
でも、大丈夫です。古物商許可の取得は、手順さえ押さえれば意外とシンプル。
ここでは、初心者でも迷わず進められる「3ステップ」に分けてご紹介します。
ステップ①「何が必要か?」を知ることから始めよう
まずは、古物商許可を取るために必要なものを整理しましょう。個人で申請する場合、主に以下の書類が必要です。
- 申請書(警察署の窓口または県警HPから入手)
- 略歴書(過去5年の職歴など)
- 住民票・身分証明書(本籍入り・市役所で取得)
- 誓約書(反社会的勢力でない旨など)
- 営業所の使用権原を証明する書類(賃貸契約書など)
- 営業所の所在地図・写真(Googleマップとスマホ写真でOK)
ここでポイントとなるのは、「営業所の実態があるか」。
自宅兼事務所でも構いませんが、「商品の保管や管理ができるスペース」「郵便物が届く環境」などが求められます。
船橋や松戸エリアでは、ワンルームマンションで申請される方も多いですが、事務所らしい体裁(棚・机・看板など)を整えておくと安心です。
ステップ②地元の警察署に申請!対応もやさしく、相談OK
書類の準備ができたら、営業所の所在地を管轄する警察署の「防犯係」窓口へ申請します。
千葉県内であれば、市川警察署・船橋警察署・松戸警察署などが対応してくれます。
提出時には、手数料19,000円(現金)がかかります。受付後、警察による内容確認・調査が行われ、通常40日〜60日程度で許可証が交付されます。
なお、担当者の対応は親切で、疑問点にも丁寧に応じてくれることが多いです。とはいえ、「聞き方」や「準備不足」によってはスムーズにいかないこともあるので、必要に応じて行政書士に相談するのも一つの方法です。
ステップ③「許可がゴール」ではない。維持のためのルールとは?
無事に許可が下りた後は、以下の3つを意識して運営を続けましょう。
1. 管理台帳の整備
前章でも触れた通り、仕入・販売記録を台帳に記載する義務があります。ExcelやクラウドアプリでもOK。
フォーマットは自由ですが、「誰から何をいつ買って、誰に売ったか」が明確になっていることが大事です。
2. 表示義務の遵守
ECサイトやフリマアプリ上に「古物商許可番号」「氏名または屋号」「公安委員会名」を明記する必要があります。
例:「千葉県公安委員会 第441030001***号」など。これがないと、信頼性にも影響します。
3. 変更届の提出は義務。忘れずに対応しよう
古物商許可に有効期限はありません。取得後は、原則として更新手続きは不要です。
ただし、以下のような「変更」があった場合には、所定の期間内に「変更届出書」などを提出する必要があります。
- 営業所の住所が変わった
- 氏名・住所・法人の役員に変更があった
- 営業所の新設や廃止
- 法人名や代表者の変更 など
これらの変更届を怠ると、無許可営業と見なされたり、許可の取消し処分の対象となる可能性があります。
運営中も「行政にきちんと届け出る姿勢」が、信用の維持に繋がります。
まずは一歩、踏み出すところから
中古ビジネスは、「サステナブル」「円安対策」「副業多様化」といった社会の流れと合致する分野です。
特に千葉県のベッドタウン地域では、「仕入れやすく、売りやすい」環境が整っており、小規模事業者にとって大きなチャンスがあります。
一方で、制度を知らずに進めてしまうと、「せっかくのチャンスを台無しにしてしまう」ことにもなりかねません。
だからこそ、正しい許可の取得と、ルールに基づいた運用が何より大切です。
もし、「手続きに不安がある」「どこから始めたらいいかわからない」という方は、お気軽にご相談ください。
行政書士として、あなたの一歩を安心して踏み出せるよう、丁寧にサポートいたします。